T.宇宙の大きさ(定常宇宙へのいざない)

3)空間の大きさ
宇宙の広がり、つまり空間の広がりは膨張しません。空間の広がりは無限です。宇宙空間のどの位置でも、直行座標が3つある三次元のすべての方向へ移動することが出来ます。少なくとも、どちらかの方向へ行けないと言う何も無い空間の広がりは考えられません。どちらかの方向へ動けないと言う空間は、例えば壁などと言う障害物の物質がある空間以外には考えられません。つまり何も無い空間では行けども行けどもどの位置からでもすべての方向へ移動することが出来ます。空間の広がりは無限です。どんな位置からでもすべての方向へ移動できることが空間の定義かもしれません。このように空間には限りはありません。

さてすべての方向へ何が移動するのでしょう。これも重要な問題です。空間の中で異質なものの占める領域、−これの定型的なものが物質です−が移動します。観測者に対して移動します。観測者のいる空間は観測者に対してすべての方向へ移動できる空間です。物質の移動を妨げるものは典型的にはまた物質です。しかしその移動を妨げる物質も空間の異質な領域にすぎません。物質が空間の異質な領域だと言う考えを認めなくとも物質の持つ体積は三次元の領域であることには何ら変わりありません。その体積は三次元の空間の一部をなすものです。物質の移動を妨げたからと言ってその妨げている何ものか−典型的には物質ですが−は、空間の広がりを妨げるものではありません。その妨げている物質自体が空間の広がりをなしているのですから。

そもそも三次元的有限とは体積があるということです。体積があるとは他との境界をなし、異質性の限られた空間の領域をなすということです。
物質を形成しない、あるいはエネルギーが緩やかに浸透している宇宙空間の背景輻射は物質の周りにも充満しています。

さらに、「運動と時間に関する考察」の中で書いていますが、宇宙空間で宇宙に対する位置は存在しません。簡単に説明しますと、観測者と、非観測物が相対運動しているときに、加速度運動を含めてどちらが運動しているかを決めるものはありません。集合論的多数がシンプルに見えるようにどちらが運動しているかを決めているのに過ぎません。
宇宙に対する位置は存在しませんから、どんなに運動しても、加速度運動しても宇宙に対する位置は変わりません。従ってすべての位置が宇宙の中心です。ここからもすべての方向に物質が移動できることがわかります。
どんなに動いても宇宙のエネルギーが緩慢に浸透している宇宙空間の界面に達することはありません。けだし空間すべてに宇宙の背景輻射がただよっていると考えるのは早計かもしれませんが。つまり宇宙空間(宇宙では在りません、ここでは宇宙と宇宙空間を区別して考えています。)は無限でありこの空間は膨張などしません。無限の体積はそれ以上大きくなりえようが無いのですから。

膨張するのは界面をなし、体積のある異質な空間の領域−典型的には物質とその集合によって形作られたもの−だけです。